麦門冬湯は漢方薬ですが、生薬を含む医薬品である以上、副作用が起こる可能性はゼロではありません。
頻度として多いのは食欲不振や胃部不快感などの消化器症状ですが、まれに間質性肺炎や偽アルドステロン症といった見逃してはいけない重大な副作用が報告されています。
■主な副作用
食欲不振、胃部不快感
■重大な副作用
- 間質性肺炎
- 階段を上ったり、少し無理をしたりすると息切れがする、空せき、発熱等がみられ、これらが急にあらわれたり、持続したりする。
- 偽アルドステロン症、ミオパチー
- 手足のだるさ、しびれ、つっぱり感やこわばりに加えて、脱力感、筋肉痛があらわれ、徐々に強くなる。
- 肝機能障害
- 発熱、かゆみ、発疹、黄疸、褐色尿、全身のだるさ、食欲不振等があらわれる。
この記事では、麦門冬湯で報告されている副作用を「よくあるもの」と「まれだが重大なもの」に分けて整理し、どんな症状が出たら服用を止めて受診すべきかの判断基準を具体的にお伝えします。
麦門冬湯の主な副作用一覧|服用前に確認しておきたい症状
麦門冬湯にも副作用があります。
服用中に気になる症状が現れた場合は、自己判断で続けず、早めに医師や薬剤師へ相談することが大切です。
消化器系の副作用(食欲不振・胃部不快感・吐き気など)
服用中に比較的多くみられる副作用として、食欲不振・胃部不快感・吐き気・下痢などの消化器症状が挙げられます。
| 関係部位 | 症状 |
|---|---|
| 消化器 | 食欲不振、胃部不快感 |
空腹時に服用したときに起こりやすい傾向があるため、胃腸への刺激が気になる場合は服用タイミングを医師や薬剤師に確認するとよいでしょう。
多くの場合は軽度で、服用を続けるうちに落ち着くこともありますが、症状が続く場合は相談してください。
重大な副作用として報告されている症状
| 副作用の種類 | 主な症状の目安 |
|---|---|
| 間質性肺炎 | 階段を上ったときなどの息切れ 息苦しさ、空せき、発熱、肺音の異常 |
| 偽アルドステロン症 | 手足のだるさ、しびれ、 つっぱり感やこわばり、 低カリウム血症、血圧上昇、 むくみ、体重増加 |
| ミオパチー | 脱力感、筋肉痛、 四肢のけいれん、麻痺 |
| 肝機能障害・黄疸 | 発熱、かゆみ、発疹、 黄疸、褐色尿、全身のだるさ、 食欲不振、AST・ALT、 Al-P・γ-GTP上昇 |
上の重大な副作用は、一般用説明文書の患者向け症状と、医療用添付文書の記載を合わせて分かりやすく整理したものです。
これらは発現頻度が高いわけではありませんが、症状が現れた場合はすぐに服用を中止し、医療機関を受診してください。
体に合わないときに現れやすい初期サイン
服用開始後まもなく、強い胃もたれ・吐き気・皮膚のかゆみや発疹などが現れた場合、体質に合っていないサインである可能性があります。
漢方薬は「副作用が少ない」と思われがちですが、生薬の成分に対して過敏に反応することがある点は知っておきましょう。
気になる変化があれば自己判断で続けず、処方を受けた医師や薬剤師に早めに相談することをおすすめします。
なぜ漢方薬でも副作用が起こるのか|麦門冬湯の特徴と注意すべき成分
「漢方薬だから安全」と思われがちですが、生薬にも薬理活性のある成分が含まれており、体質や服用状況によっては副作用が生じることがあります。
麦門冬湯も例外ではなく、構成する生薬の中に副作用との関わりが指摘されているものがあるため、どの成分に注意が必要かを把握しておくことが大切です。
麦門冬湯の構成生薬と期待される働き
麦門冬湯は6種類の生薬で構成され、ツムラの解説では麦門冬が主薬とされています。
一般向け解説では、のどや気管にうるおいを与え、乾燥による刺激をやわらげて、たんの切れにくい咳を鎮める方向で用いられる漢方と説明されています。
| 構成生薬 | 一般に期待される働き |
|---|---|
| 麦門冬 (ばくもんどう) | うるおいを補い、乾いた咳・のどの乾燥感をやわらげる中心的な役割 |
| 半夏 (はんげ) | 水分の停滞や吐き気に関わる症状を整え、たんの切れにくさを補助する役割 |
| 粳米 (こうべい) | 口渇を抑え、消耗した体を支える方向で配合される生薬 |
| 大棗 (たいそう) | 咳や緊張・ひきつれに関わる症状をやわらげる方向で支える生薬 |
| 人参 (にんじん) | 体力低下を支え、口渇のある消耗状態を補う方向の生薬 |
| 甘草 (かんぞう) | 切迫した症状やけいれん・痛みをやわらげる方向で働く生薬 |
甘草・半夏など副作用に関わりやすい生薬の特徴

副作用リスクの観点で特に注意したいのが甘草と半夏の2つです。
- 甘草(かんぞう)
- 大量に服用すると、偽アルドステロン症(血圧上昇、浮腫、動悸、筋肉痛など)のリスクあり
- 半夏(はんげ)
- 消化器への刺激性が指摘されており、胃腸が弱い方では吐き気や胃部不快感が現れる可能性あり
複数の漢方薬を併用している場合や、市販の風邪薬・サプリメントを使っている場合は、成分の重複が起こりやすいため、服用前に薬剤師や医師に相談することをおすすめします。
麦門冬湯を飲んではいけない人・慎重投与が必要な人

麦門冬湯は体質や症状の種類によっては、十分な効果が得られないだけでなく、症状を悪化させる可能性があります。
向いていない体質・症状のタイプに当てはまる場合は、自己判断で服用を始めず、医師や薬剤師に相談することを優先してください。
服用を避けたほうがよい体質・症状のタイプ
以下のような人が
| 該当するタイプ | 注意すべき理由 |
|---|---|
| 痰が多く湿った咳が続いている | 麦門冬湯は乾いた咳向けの処方のため、痰を増やす可能性がある |
| 甘草過敏または偽アルドステロン症の既往がある | 甘草含有による電解質異常リスクがさらに高まる |
| むくみや高血圧がある | 偽アルドステロン症の症状を悪化させるおそれがある |
| アルドステロン症・低カリウム血症の診断がある | 原則として服用を避けることが推奨される |
痰が多い湿った咳には不向きとされる理由
麦門冬湯は、喉や気道の乾燥による空咳を和らげることを想定した処方です。
構成生薬の麦門冬には潤いを補う働きがあるとされており、すでに痰が多い状態でこの潤いが加わると、痰がさらに増えて咳が悪化するケースがあると考えられています。
湿った咳・痰の多い咳には、別の処方が適している場合がありますので、症状のタイプに合った薬を医師や薬剤師に選んでもらうことが大切です。
妊娠中・授乳中・高齢者が注意すべきポイント
妊娠中・授乳中の患者への麦門冬湯の安全性は、現時点で十分なデータが確立されていません。
服用の必要がある場合は、必ず担当の医師に相談したうえで判断してください。
また、高齢の患者は一般的に体内での薬の処理能力が低下しやすく、甘草による偽アルドステロン症や消化器症状が現れやすい傾向があります。
用量の調整が必要になることもあるため、高齢の方が新たに服用を始める場合は、自己判断を避け医療機関に確認することをおすすめします。
飲み合わせの注意点|甘草の重複と他の薬との併用リスク
麦門冬湯を他の薬と併用する際に、とくに注意が必要なのが甘草の重複です。
甘草は多くの漢方薬に含まれており、複数の製剤を同時に服用すると、意図せず摂取量が増えてしまうことがあります。
甘草の過剰摂取は偽アルドステロン症やミオパチーのリスクを高めるため、他の薬との併用は必ず医師や薬剤師に確認してください。
甘草を含む漢方薬や食品との重複によるリスク

甘草を含む漢方薬は麦門冬湯以外にも多数あります。
葛根湯・小青竜湯・補中益気湯など、日常的によく使われる処方にも甘草が配合されており、複数の漢方薬を併用している場合、自覚のないまま甘草が重複しているケースが少なくありません。
また、甘草はグミや飴・健康食品などにも使われることがあるため、食品由来の重複にも注意が必要です。
市販の風邪薬・咳止め・利尿薬との併用で気をつけること
| 併用する薬の種類 | 注意のポイント |
|---|---|
| 市販の風邪薬・総合感冒薬 | 甘草を含む製品があるため、成分表示を確認する |
| 市販の咳止め・去痰薬 | 作用が重複したり、成分の過剰摂取につながる場合がある |
| 利尿薬(フロセミドなど) | 低カリウム血症が相互に増強されるリスクがある |
| 副腎皮質ステロイド薬 | 電解質異常が起こりやすくなる可能性がある |
併用前に医師・薬剤師へ相談すべきケース
以下のいずれかに当てはまる場合は、自己判断で服用を続けず、必ず医師または薬剤師に相談してください。
- 他の漢方薬をすでに服用している
- 市販の風邪薬・咳止めを麦門冬湯と同時に使おうとしている
- 利尿薬・降圧薬・ステロイド薬など慢性疾患の薬を服用中である
- 健康食品やサプリメントを定期的に摂取している
飲み合わせの詳細については、麦門冬湯の市販品でおすすめはどれ?種類・価格・医療用との違いを整理もあわせてご参照ください。
麦門冬湯の正しい飲み方と服用期間の目安

麦門冬湯の用法・用量は製剤によって異なりますが、一般的には食前または食間(食事と食事の間)に服用するよう定められています。
服用タイミングや期間を正しく把握しておくことで、より安定した服用が続けやすくなります。
食前・食間に飲む理由と食後服用でも問題ないか
食前・食間が指定されているのは、空腹時のほうが消化管から生薬成分が吸収されやすいと考えられているためです。
ただし、胃腸への刺激が気になる場合や、どうしても食後になってしまう場合は、服用しないよりも食後に飲むほうがよいこともあります。
タイミングについて迷う場合は、処方を受けた医師や薬剤師に確認してください。
なお、ツムラ麦門冬湯エキス顆粒など医療用製剤の用法は添付文書に準拠するため、自己判断で変更しないことが原則です。
飲み忘れたときの対処法
飲み忘れを補うために2回分をまとめて服用することは避けてください。
| 気づいたタイミング | 対応の考え方 |
|---|---|
| 次の服用時間まで十分ある場合 | 気づいた時点でできるだけ早めに服用する |
| 次の服用時間が近い場合 | その回はスキップし、次の時間から通常どおり服用する |
| どちらか判断しにくい場合 | 薬剤師や医師に確認する |
用量を守ることが、副作用リスクを抑えるうえでも重要です。
効果を感じるまでの期間と服用をやめるタイミングの考え方
漢方薬は一般的に、効果が現れるまでに一定の期間がかかることがあります。
麦門冬湯の場合も、症状の程度や体質によって異なりますが、数日から2〜4週間程度を目安に経過を観察するよう案内されることが多いようです。
症状が改善した場合も、自己判断で急に中止せず、処方された期間の服用を続けるかどうか医師に相談することをおすすめします。
一方、2週間以上服用しても咳や喉の乾燥に変化がみられない場合は、処方の見直しが必要な可能性があります。
効果の考え方についてはこちらの記事(麦門冬湯の効果はすごい?空咳・喉の乾燥に使われる理由と効果の目安)もあわせてご参照ください。
こんなときは受診を|服用中に医療機関へ相談したいケース

麦門冬湯を服用中であっても、症状の変化によっては自己判断で続けるより、早めに医療機関へ相談したほうがよい場合があります。
「様子を見ていれば治まるだろう」と判断を先送りにすることで、受診が遅れるリスクがある点を念頭に置いてください。
副作用が疑われる症状が出たとき
麦門冬湯を服用し始めてから以下のような症状が現れた場合、副作用の可能性があります。
| 症状の種類 | 想定される副作用 |
|---|---|
| 息切れ・発熱・咳の悪化 | 間質性肺炎の可能性 |
| むくみ・血圧上昇・体のだるさ | 偽アルドステロン症の可能性 |
| 筋力の低下・こわばり | ミオパチーの可能性 |
| 皮膚や白目の黄変・強い倦怠感 | 肝機能障害・黄疸の可能性 |
| 皮膚のかゆみ・発疹 | 過敏反応の可能性 |
2週間以上服用しても咳が改善しないとき
麦門冬湯は一般的に数日から数週間を目安に経過をみますが、2週間以上服用しても咳や喉の症状に変化がみられない場合は、処方が体質や症状に合っていない可能性があります。
また、咳が長引く場合は気管支喘息・逆流性食道炎・百日咳など、別の疾患が背景にあることも考えられます。
漢方薬が合わないと感じたときの判断基準として、「2週間で変化なし」を一つの目安にするとよいでしょう。
自己判断で用法・用量を変えず、医師に相談して処方の見直しを検討してください。
麦門冬湯の副作用に関するよくある質問

麦門冬湯は長期間飲み続けても大丈夫ですか?
長期服用の安全性は、体質や併用薬の状況によって異なります。
とくに注意が必要なのが甘草の含有による偽アルドステロン症のリスクで、長期間服用するほど電解質異常が蓄積しやすくなる可能性があります。
定期的に医師や薬剤師に状態を確認してもらいながら服用を続けることが大切です。
むくみ・血圧の変化・体のだるさなどが現れた場合は、自己判断で続けず早めに相談してください。
子どもに服用させるときの注意点はありますか?
小児への服用については、年齢・体重に応じた用量の調整が必要です。
市販品の添付文書には年齢ごとの用量目安が記載されていますが、幼児や低年齢の子どもへの服用は医師の判断のもとで行うことが望ましいとされています。
副作用の症状を子ども自身が言語化しにくい場合もあるため、保護者が食欲・顔色・排便状態などの変化を注意深く観察することが大切です。
不明な点は薬剤師または小児科医に相談してください。
コロナ後遺症の咳に使われることがありますか?
新型コロナウイルス感染症の後遺症として、乾いた咳や喉の違和感が長引くケースが報告されており、乾燥した気道の症状への作用が期待されることから、麦門冬湯が選択される場合があります。
ただし、コロナ後遺症に対する麦門冬湯の効果は現時点で十分に確立されたものではなく、症状や体質によって向き不向きがあります。
自己判断で市販品を使い続けるより、症状が改善しない場合は医師に相談のうえ、処方の適否を確認することをおすすめします。
麦門冬湯の副作用を正しく知り安全に活用するために

麦門冬湯は漢方薬ですが、甘草・半夏などの生薬成分により、消化器症状や偽アルドステロン症といった副作用が起こる可能性があります。
■主な副作用
食欲不振、胃部不快感
■重大な副作用
- 間質性肺炎
- 階段を上ったり、少し無理をしたりすると息切れがする、空せき、発熱等がみられ、これらが急にあらわれたり、持続したりする。
- 偽アルドステロン症、ミオパチー
- 手足のだるさ、しびれ、つっぱり感やこわばりに加えて、脱力感、筋肉痛があらわれ、徐々に強くなる。
- 肝機能障害
- 発熱、かゆみ、発疹、黄疸、褐色尿、全身のだるさ、食欲不振等があらわれる。
体に合わないと感じる症状が現れたときは、自己判断で服用を続けず、早めに医師や薬剤師へ相談することが大切です。
市販品で使い始めた場合も、2週間を目安に症状の改善を確認し、変化がなければ受診を検討してください。
飲み合わせや体質上の注意点が気になる方は、服用前に薬剤師へ確認しておくと安心です。
副作用の詳細や飲み合わせの注意点については、関連記事もあわせてご参照ください。
